千石は千川と小石川をあわせた地名。不忍通りの左右に広がる街。この地域の白眉は古
い商家「伊勢五商店」と、葉山商店(旧亀井伯爵邸)だ。
旧亀井伯爵邸は、旧津和野藩主のお屋敷で、もともとは3000坪の敷地の中に洋館と和館
があった。関東大震災後に亀井家はこの地を手放し、住宅地として分譲された。現在残ってい る洋館は元の場所から曳家され向きも変わっているが、不忍通りからの道の突き当たりにあ るため、印象深い。
森鴎外も訪れた可能性の高い建物で、所有者の方も大切に残してきたものの近く建替える
ため、引き取り移築してくれる方を探している。
・・・残念ながら解体されました。(2003.6)
旧亀井伯爵邸玄関 建物側面
◆旧亀井伯爵邸は明治17年に建てられた東京で最も古い洋館住宅。亀井家の手を離れてから何度か改修されてい
るようだが、もともとの設計者は、松ヶ崎萬長(男爵)の可能性がある。この家の施主である亀井慈基の兄にあたる 松ヶ崎萬長(男爵)は、那須にある青木周蔵別荘の設計者として知られている。
玄関の車寄せには亀井家の紋をデザインした装飾がある。また、内部は非常に広く舞踏会などが行われたであろ
うことを想像させる。現在の所有者の前は病院だったそうで、病院時代の改造もあるが、建具などは本物のみがもつ 風格がある。 詳細は岩波書店刊「東京たてもの伝説」(藤森照信・森まゆみ)参照
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